華夏オーケストラ第七回定期公演「長城随想」&お芝居「リチャード三世」レポ+旅行記 一、二度あることは三度ある。  華夏。待ちに待った、閔惠芬さんゲスト出演の定期公演である。  その日は朝からバタバタだった。洗濯をし、早めに家を出たが平日の通常渋滞よりも混雑が酷く、予定していた電車に乗り遅れるというハプニングが発生した。  まあ翌日夜にお稽古になってしまったので、地元駅から二つ目の駅まで行かなければならなかったのも一つの要因と言えるかも知れない。  乗り逃がした電車の後は三十分鈍行さえ止まらない。一瞬電車で地元駅まで戻って特急に乗り換えようかと悩んだ。しかし元々空港に一時間前には到着出来るよう計算して電車を選んだのである。往復の金額と、時間差を計算して、勿体無い気がしたので、寒風の中鈍行列車を待つ羽目になった。  思えばこれがそもそもの間違いのモトだったのである。  駅構内にアナウンスが響いて、普通ならすぐ見える筈の電車が見えない。遅いなぁと思いつつもまだ余裕があると信じていたから特に何も考えていなかった。この時は。  駅を出てすぐに翌日の市村正親さんの舞台を一緒に見に行く友人から昼食についてのメールが来た。電車に揺られながら返事を書いて送信し、時間の経過がおかしいことに気付いた。 「何分か、遅れているような……?」  そう思った途端にアナウンスが入った。二、三分遅れて出発したという。原因についての説明はこの時、全くなかった。多分その後も思い出す限りではなかったように思う。  ところで。  通勤に電車をご利用になった方があればご存知かも知れない。ダイヤの乱れというのは一旦起こってしまうと取り返しがきかない。そしてそれは都心に近づく程更に遅くなってしまう危険性を孕んでいるのである。途中で挽回してくれること(がありうるはずがないが)を切に祈りつつ、大人しくすることにした。が。  こういう厭な予感ほど当たるものはない。  その予感は見事的中し、電車は更に遅れるのだった。  ルートがまだ一本しかない時は素直に諦めればいいが、複数本ある時はどうしても「そっちの方が早かったのでは」と乗っていてさえ悩むものである。  上野から渋谷までJRで行く場合などに内回りが良いのか、外回りの方が良かったか、それはある意味人生にとても似ている(笑)。  山手線で真剣に悩んだ。  浜松町で降りるか、品川で乗り換えるか。ジョルダン検索だと若干品川の方が早そうだった。  そして悲劇は繰り返された((C)北斗の拳)  品川駅ではすぐに羽田行きの改札が見える。でもJRの中から切符売場らしきものが見えない。JRでの切符を改札に通して出ようとしたら見事に弾かれて改札のおぢさんに焦りながら訊いてみた。  JRのチケットは勿論だけど、パスネットのカードも持っていたから使えるかなと思い、一緒に見せたら 「二枚重ねて入れて」  ……そんなあっけないもんで良かったのか。(ちょっと拍子抜け)  ここまでは、まあ良しとしよう。  焦りながらも乗った電車が、途中の何もない場所でいきなり停車。と思うと「信号機故障の為急停車…」のアナウンス。  またかい!!  そして遅れに遅れ、十時三十分の飛行機に乗る筈だった私がダッシュで息を切らせながらようやく空港の受付のお姉ちゃんの前に立てたのは、十時二十分だった。  チェックイン機は既に閉ざされ、もう何も出来ない。  一応片道金額を確認したら¥18,000。  いや、私は何があっても大阪に行かねばならんのだっ!!  そしてそのお姉ちゃんを捕まえて目に力を込め(まさに目一杯)精一杯訴えたのである。  当然、拒否される。勿論当たり前のことだ。  しかし、ここで長く時間を費やせば、他のお客がやってきて騒ぎになる。粘ったもん勝ちだ!!  で。この飛行機は駄目だったけど、次のに乗せて貰えました(マジよ)。  そこのお姉ちゃんに連れていかれた窓口で切符を発行して貰い、無事次の飛行機(十一時三十分発)に搭乗。 #勿論、こんなことは真似してはいけません(←お前がいうな(^^;))  ただ、フォローしておくと、全ての手続きが終了したあとで、「ご迷惑をお掛けしてすみませんでした」と受付のお姉ちゃんに謝りに行った時、チラっと「電車の遅延が日本も重なって…」と言ったら「公共交通機関の遅延の場合には、遅延証明書をお持ち頂ければ……」だって☆  なんだ、上野で遅延証明書貰ってくれば問題なかったんじゃん。 #慌ててたから貰ってなかったのよ。  大阪ではいるかさんとお茶をしようと話してあったので、電車の遅延と飛行機に乗り遅れたこと、そして次の飛行機に搭乗が決定したことをメールでお知らせした。乗る時に電源落とさないといけないもんね。そして多事多端ながらもなんとか大阪は伊丹空港へ向かうことになったのでした。  しかし。前の飛行機は時間通りに離陸してたはずなのに。暫く経っても動く気配がない。気がつくと、左手斜め前あたりの席が二つ空いていて、そこの席と思しきナンバーと乗客名がアナウンスされていた。おーい、チェックインしたんなら乗り遅れるなよぉ(^^;)  気付くと、他の人かなと思える人がそこに座った。うむむ。これが噂のキャンセル待ち?! #なんで気付いたかというと、アナウンスされてた名前は女性二人。乗ってた人は男女。  朝は急いだせいもあって、食事が摂れていない。お腹が空いているので早く温かい飲み物が欲しいなぁと考える。確かJALだとコンソメスープなんだよね♪ ついでに。この機はエコノミー席でも一人に一つ、TV画面があった。コクピットの真下あたりにカメラがあるのかな? チャンネルの一つに外の風景があった。上から見るって言っても航空写真じゃなくて動いていくのはなかなか楽しい。他にも地図や高度を示したものはあったけど、一番気に入ったのはそれだった。  さて、楽しみにしてた飲み物タイム。実は遥か以前、Stardust☆Revueの神戸LIVEに出かけた折熟睡のあまり飲み物を貰えなかったことがある。  今回は正直睡眠時間も少なめだったので、寝てもいいかもと思ってはいたが睡眠時間の少なさが災いし、神経が少し昂ぶっていて、あまり眠れない。空腹も一つの要因かも知れない。すっちぃのお姉ちゃんにスープを頼んで口に運ぶと温かい液体とともに流れ込んで来る満足感。やっぱスープはいいね♪  しかし結局この後も眠るには至らなかった…(笑)  東京羽田をちょっと遅めに出発して(少なくとも十五分程度は)大阪伊丹に着いたのは、十二時四十分を回っていたと思う。高速バス停で切符を買って、大阪行きのバスを探す。思いのほか早く見つかったが、ちょっと不安になり乗車寸前に「これは丸ビルの前に停まりますか?」と質問してみた。そう、今回丸ビルに拘ったのはバス停が目の前だったからなのだ。  折悪しく、十二時五十分と十三時のバスは違う場所行きだった。十三時十分発なら丸ビルへ向かうよ、とのおぢさんの言葉を信じて暫く待つと。来たよ来たよ来ました(^^) 丸ビル直行バス(*^^*) 二、二度あることは三度ある?!  丸ビルへ行くバスは一時間に三本程度だったと思う。そして丸ビルから空港へ向かうバスも同じ程度だった。それが丸ビルのあるホテル、大阪第一ホテルを選んだ唯一つの理由である。グランヴィアだと-¥850にすることも出来た。 #前月十日迄の予約の場合¥7,000(税別、2003/12現在)  ホテルのホームページから申し込むと¥8,200(税込)の大阪第一ホテルは、サイトによって料金が異なる(2003/12現在)。じゃらんでは¥8,200(税別)だった。通常安いホテル(¥5,000位)を選ぶ私には奮発と言っても過言ではないけれど、飛行機代が¥0だったことが一つの要因ではあった。マイレージが溜まっていてタダで行ける。しかもそれは今年末で一部無効になる。  翌日が市村正親さんの「リチャード三世」だっただけにそんな無謀なと我ながら思ったけれど、タダというのはある意味怖いものである(^^;) 不可能を可能にしてしまう。  丸ビルはその名の通り、円柱型のビルであり、ホテル客室は全て夜景を堪能出来るようになっている。ホテルのチェックインは十四時。メールで到着時間とチェックアウト時間を伝えたら、「準備が出来ていたらご案内する」とのことだったのでとりあえずフロントで予約がある旨を伝えて名乗った。予測通り、部屋の準備は出来ていなかった(^^;)  まあ仕方ない。食事にしようと思ってホテルの地下へ入った…がこれが間違いだった。  見た目はこざっぱりとしたイタリアンなお店でパスタが異様に不味かったのである。サラダがぱさぱさしていたのは、まあランチタイムが終盤だったから仕方ないとも言えよう。  しかし!! パスタはなおざりにしてはならないのだ!!(と声が大になる) まあ食べてしまってはどうしようもない。この次に期待しよう。  ガイドブックで見たお店にすれば良かったと思ったのは言うまでもないが、重い荷物を抱えていること、不案内な場所を歩くことに不安を感じていたので選択肢自体は大きく間違ってはいなかったと思う。  でもやっぱりスープのランチが食べたかったな…(まだ言う)。  フロントに戻ってチェックイン。ついでに心配の種だったので、大阪NHKホールの場所ともう一つの目的だった「十三堂楽器」のある駅を所要時間も含めて確認。気がかりなのでモーニングコールも頼み、ついでに支払も済ませておく。  部屋は確か十九階あたりで、十八号室だった。窓から大阪駅の線路が見えた。ってことは北側かな? ホテルの部屋は比較的快適だった。一番気に入ったのは「使い捨てスポンジタオル」!! 不織布っぽいタオルのようなもので、パッケージされていた。厚さは多分二ミリメートル程度、大きさは縦十センチメートル程度に横十五センチメートル程度かな? 因みにこれは持ち帰って、美冬。さんにお土産と一緒に進呈したところ、ちょっとウケた(笑)  唯一気になったのは、バスタブ。丸ビルの名の通り全室が外向きであることは説明したが、そのためかどうか、バスタブが台形に出来ているのである。正直、使い難さを感じた。 #他に誰か使ってたらレポして(^^;)  部屋でちょっとゆっくりして、荷物のうち、着替えなどを出してちょっと鞄を軽くしたところでお買物。今朝車の中にバレッタを忘れてきたらしいのである。それに、鞄自体が重いので、出来ればもっと楽なトートが一つ欲しかった。大丸百貨店などをちょっと歩いてみたが、高いばかりで壊れそうなものなどが多く、なかなか気に入らない。  ここでいるかさんと連絡が取れ、なんばに移動。十三堂楽器へ。  土地鑑のある人と歩くのは、心理的に楽である。十三堂楽器の住所で大体の場所を理解して貰えたので駐車場のお兄ちゃんなどを捕まえて場所を吐かせつつ(←おい)目的の場所を探した。普段こういう時って目ざとい私だけど、看板を見つけてくれたのはいるかさん。ありがと〜(^^)  そして十三堂でCDや二胡などをちょこちょこ見る。店長とレジ担当の女性、それから何故か二胡を拉く男性。正直言ってしまえば下手だなと思ったけどそれはさておき。意外に少ないと感じた。質は良さそうだけど。店長にCD在庫など確認しているうちに二胡の話になり、ちょっとお話をした。今回の主役閔惠芬さんのことなど。で、笛子のCDを一枚GETしてお店を後にした。  次に訪れたのは…¥100ショップ!! 十三堂楽器を探して歩いている際、ちょっと洒落た感じの明るいお店をいるかさんと二人で発見した。しかも良く見たら「ダイソー」。二人で盛り上がり、入ってみることになった(笑) ここで私は小さなヘアピン二本一組と念願のトートをGET。トートは¥200だったけど、ファスナーが上にも内ポケにもちゃんとついている。前のに比較すると量は入らないが軽くてとても楽である。  他の商品もなかなか良かった。ああいうのがこっちにも出来るといいんだけどなぁ。  それからいるかさんとお茶をした。私が選んだのはスコーンとクッキーのセットに紅茶だったかな。ケーキの味は然程でもなかったけど、紅茶の種類が結構あるのが嬉しかった。ニルギリとかヌワラエリヤとか置いてない店のが多いよね。 で、いるかさんに送って貰って谷町四丁目へ。今回いるかさんはチケットを取ってないので、ここで一旦お別れ。開場まではまだまだ余裕だけど早めにホールへ向かう。  で、扉を開けると。そこには既に長蛇の列!!  自由席だもんね〜、閔惠芬さんだもんね〜。おばさま方が一番多うございました。列に並ぶ前にお手洗い寄れるかな〜と思ったけどそのまま並ぶ。  時間通りに開場へ。(教会じゃないのよ)((C)My Fair Lady)  ホールへ入ってみると、結構広かった。二階席もあったけど規模はどのくらいだったんだろう? 当初後ろにひっそり、のつもりだったんだけど、開場直後にしては前の方が荷物や人が少ない?と判断、思い切って最前列へ。  そうしたら、係の人がアナウンスしていた。という訳で、ステージに向かって左翼の最前列、通路から二人目の席についた。 三、袖摺り合うも他生の縁。  ここでちょっと驚きが発生する。隣の席に陣取った男性が二胡のケースらしきものを持っていたので、「二胡ですか」と声を掛けてみたら、「さっき十三堂でお会いしましたよね」と返ってきたのである。  帽子被ってたから判んなかったよ〜!! その後、お手洗いから戻ると彼は姿を消していた。私の荷物はちゃんとあった(←おい)。  十三堂楽器でレジをしていた女性と一緒に来たらしいが多分関西一(と思われる)二胡サイト「にこにこ通信」のオーナー・kanaさんが来ているはずなので、そちらに合流したのだろうと思う(kanaさんは店長とも懇意の筈だから)。  ステージは座った目の高さよりも若干高いくらいかも知れない。二胡を演奏する人ならより近くでみたいだろうが、高さの差がありすぎて見辛いよりは、全体を見ることを選ぶか、ある程度離れてもそこそこに見やすい場所を選ぶ方が多いらしい。特定の人が目的だった私は迷わず最前列に来たが、この位置からは後部の人は絶対に見えないし、指揮者のまん前の揚琴でさえ十分に見えるとは言えない。ましてや揚琴奏者は前出の二胡サイトで時折書き込む常連さんなのだ。知人が参加しているなら、その人が見える位置を選ぶだろう。  ま、そんなちょっとした出会いはさておき。華夏である。  華夏オーケストラは、中国人主宰者のもとに中国楽器で編成されたオーケストラで、団員は殆ど日本人。入団者はその進度に合わせて指導して貰えるので、大規模な学習塾@中国民族音楽楽器バージョンとでも考えて貰えるとありがたい。まだ見ぬものだが天華アンサンブルなのが似たようなものか? 日本ではまだまだ少ないのが実情である。  二胡をはじめとして、古筝、揚琴、笛子などいろんな楽器がオーケストラの如く指揮者を中心とした半円状に広がって合図とともに整然と構え演奏するさまは、西洋楽器のオーケストラさながらである。  私はせいぜいがクラスでの合奏・合唱経験があるだけでブラスバンドの知識はないので正確に論評することは出来ないが、少なくともアマチュア的甘さはなかったように思う。  ここで演奏プログラムを開いてみよう。一部は華夏が毎年開催する定期公演、二部はゲストの二胡演奏家・閔惠芬を招いてのステージである。  一部では来場した中高年の日本人を意識してか、馴染みの深い「さくら」「箱根八里」「荒城の月」などを中心に数曲演奏。合唱サークルも一緒になっての大掛かりな舞台になっている。ソプラノとテナーのソロ歌手の見せ場もあり(声自体は良かったが中国語の発音は最悪だった。こういうものでは仕方ないしやったことを褒めるべきなんだろう)、日本人の琴演奏家参加での演目もあった。  しかしステージ前方にゆとりがなさすぎ、運ぶ人は大変そうだった。指揮者の人なんか跨げないからステージから落ちそうになりながら移動してたもんなぁ。。。  そして一部が終わり、休憩を経て待ちに待った二部である。  平たくいえば、この二部のためだけにわざわざ大阪まで足を運んだと言っても過言ではない。十月二十二日の中国国宝楽団を一目見た時から憧れた人をもう一度見るためだけに来たのである。  二胡奏者、閔惠芬。  略歴を書いた方がいいかも知れないが、既に長文になっているのでこれは止めておこう。簡単に言おう。中国随一の二胡演奏家だ。  長城随想とは、アメリカで万里の長城の絵を見た作曲家が、それに感動して作曲し、閔惠芬に演奏させた壮大なオーケストラ曲である。  呆然として涙、滂沱たり。  漢文っぽく書けばそんな感じかも知れない。最初の一音からもう無意識のうちに涙が溢れてくる感じだった。今回は連れがいないので、念のためハンカチをしっかり用意していたが啜り泣きを堪えるのに丁度良かった(笑) #連れが居れば我慢しきっちゃうんである。  長城随想は多分四つくらいの部に別れていると思う。全体を通して表情は峻厳というに相応しい。曲の格調の高さと演奏の質の高さ。音の層の厚み。他には「江河水」「新婚別」など。私自身の反応は同じだが(爆)、演奏している表情は若干穏やかに見えた。  おまけで「空山鳥語」のソロ。これは二胡演奏家なら大抵の人がCDに収録している非常に有名な曲の一つである。単に山で鳥が鳴いているという曲だが、巧者になると鳴き声を二胡でやってしまうのだから恐るべし!  今回も「ホーホケキョ」の音色が会場に木霊して、あちらこちらから笑いが零れてきた。それを受けるかのような、微笑み。ファンサービスをも楽しむような演奏である。悪く言えばちょっとのっぺりしていて東京国立博物館東洋館に展示されている中国・唐の仏像を彷彿とさせるようなお顔立ちだが、にっこり微笑むと観音様にちょっと似てる気がする(笑)  アンコールは「賽馬」。  舞台袖に引っ込んで、拍手でまた迎えられるとマイクに向かって「賽馬!」とだけ喋った。アップテンポで三分足らずの短い曲だが、日本では非常に人気のある曲の一つ。TV中国語会話でも良くちょっとしたコーナーで演奏されていて、耳にしている人も多いことだろう。満面の笑みで演奏している。  さて、お気づきだろうが、他の奏者は全員譜面台があり、それを見て演奏しているが、閔惠芬には譜面台さえなかった。暗譜しているということだろう。  西洋楽器のオーケストラだと、どんな人でも譜面は置いてあるが、これはどちらの方がいいのか? ちょっと悩んだ瞬間でもあった。  彼女が譜面を見たのは唯一度。  最終アンコール「花〜すべての人の心に花を〜」だけである。この時には、一部に出演していた合唱サークルの皆さんとソプラノ&テナーのソロ二人も加わりお客も混じって全員での合唱&合奏となった。Stardust☆Revueも良くやるけど、会場での連帯感が生まれて非常に楽しくなるので、私も大好きである。  しかし。今回は閔惠芬さんの音に集中したかったので、ちょっと淋しかった(笑)  そして「謝々」という言葉と満面の笑みを残して華夏定期公演は終わりを迎えた。 四、宴のあと。  演奏が終って暫くはぼーっとしていた。落涙してたので、落ち着くまでちょっと待ち、閉場の時間が迫っているので、適当な所から外へ出る。ホール部分を見上げると、半球型の硝子のドームが夜空と夜景とホールの扉を映していて、美しかった。エスカレータを降りる人々も映って見える。日中でも楽しいかも知れないが、この美しさを最大限に発揮出来るのは夕方か夜だろう。  エスカレータの途中で、多分ホールのスタッフかと思われる人がいたので、「ちょっとお願いしたいんですけど」と、華夏へのメッセージを託した。  快く引き受けて下さったが、伝わったかどうか?  閑話休題。  アンケートなどがあると、コンサートや展覧会に限らず極力お答えしているが、行きつけの喫茶店Lでも時折ちょっとした感想を述べている。私はクリスマス・イヴにはケーキを食べない。二十日頃に予約注文しておき、早めに食べるのである。それは以前行きつけの店の一つだった某店で予約していたのにスポンジはバサバサで明らかに作り置き、クリームの塗り方は粗雑、形は大雑把にまとめられていただけで常時のような端整さがなかったことがある。それ以来、繁忙期にそこを訪れることを止めた。そして、現在行きつけのL店でもわざわざ違う日にケーキを食べるのである。  普段行きつけのお店で予めちょっとした感想を述べておくと次第次第に好みを憶えてくれるようになる。そして、次の機会の時にそれを考えて作ってくれるようになるのだ。  2003年のクリスマスはマロンのブッシュ・ド・ノエル。ケーキを受け取りに行くと、オーナーが顔を出して、「甘さを抑えて作ってみました」と声を掛けてくれた。実際、コクがあるのに爽やかな甘さが生きて、非常に優しい味になっている。  次回お会いしたら「とても美味しかった。年配者にも好評だった」と伝えようと思っている。きっと、次に作る時に参考にしてくれるに違いない。  こういったアンケートは人の話を聞かないタイプには無意味でしかないが、向上心のある人には非常にありがたいものであるようだ。だから、特に美味しいと思った時にはそれを褒めるようにしている。美味しくないと思ったら、口に合わないこと、そしてその原因についてさらっと話すことにしている。それでもしお店が味を変えないなら、その料理やお菓子は二度と口にしないようにすることにしている。  話が長くなった。  向上しようとするなら、肯定的な意見も否定的なそれも受け入れて、考えて行動すべきである。肯定的なものばかりを受け入れていては、傲岸不遜になるばかりで、謙虚さを学べない。しかし否定的なものばかりを受け入れていては卑屈になってしまい、自信を失いかねない。両方をバランス良く吸収出来るのが望ましい。  だから、演奏家にも料理人にもそして芸術家にもそれぞれ感想は必要なのである。師匠がいるから不要だという人もいるが師匠がいない人には大衆が師匠となりうるのだ。どの意見を取捨選択していくかはその人によるがその目を自身で養うことも必要なのである。  話を大阪に戻そう。  谷町四丁目の駅からいるかさんに電話を入れると思いがけなくその谷町四丁目の駅で電車を待っていたので、合流して飲みに行くことになった。大阪駅の辺りは梅田という地名で繁華街である。丁度ホテルからも近かったので、このあたりでということになった。  地元の人がいることはとても心強い(笑)  宴の席で何を話したかはちょっとナイショにして(笑) 年齢が近いせいもあって、いろんな話を楽しくして、二人とも満面の笑みだったことだけ書いておこう。軽く一杯だけ飲み、餅を湯葉で巻いて揚げたのや牡蠣フライ((C)GENKI)とサラダなどを注文してゆっくり味わいながらいろんな事を語り合えたのはとても楽しかった。飲み終えて、名残は惜しいけど再会を約して別れる。  ホテルに戻って入浴し、ざっと荷物をまとめた。フロントにはモーニングコールを依頼してあるし、携帯電話のアラームも準備した。トドメにサイドボードのアラームを出発予定時間にして準備完了。就寝タイムである。気持ちが昂ぶって眠れないということもなく(笑)あっさり眠りに入った。 五、有楽町で会いましょう。  翌朝は目覚ましが鳴る前に目が醒めた。  旅行先では緊張しているため、往々にしてそういうことがある。六時五十五分のバスに乗れば確実に予定の機に搭乗出来るが旅先では何が起こるか判らないし、昨日のようなことがあっても困るので、早めに動くことにした。 「いぃ〜つものよ〜に(C)GENKI」体温を測ってベットから降りる。エアコンが効いてるせいか、あまり寒くはない。洗面を済ませてベッドに戻り、着替えをしようとした瞬間「それ」に気付いた。  旅で緊張してたせいじゃなかった訳ね>早いお目覚め  ホテルのフロントで一応謝っておけばいいか。  支度を整え、朝食を摂りたかったので六時半すぎにフロントへ。チェックインの時に会計を済ませておいたので気分的にも楽である。フロントでこそっと謝って、コンビニの場所を訊くと一分程度の所にあるようだ。  バスのチケットを購入してから行くつもりでバス停に行くとバスがいる??? 確認すると、予定より一本早いバスだった。まだ空席はあるようだしと乗ることに決定。そしてバスは順調に空港へ向かい、二十分ちょっとくらいで伊丹空港に到着した。  お土産物はるるぶで適当に確認していたが、全然買っていられなかったことに今更気付いた。ゆったり朝食にも惹かれたが、時間も早いことだし土産を確保してからにしようとまずチェックインを済ませる。空港の土産物屋はゲートをくぐる前の方が店舗が多い。急いで、でも焦らずに一軒一軒のお店を見ていくことにした。漬物屋、駄菓子屋、和菓子屋などなど。そしてるるぶで見つけて欲しいと思っていたものも発見することが出来た!! いつもお世話になっている美冬。さんとライブ友R君に進呈しよう♪とほくほくしつつGET。他にも師匠用にご当地お菓子、母には富有柿ゼリー、職場の男性陣には栗羊羹、女性には焼梅などを適当に買い揃える。シメにコンビニでお茶とおにぎりを選んで搭乗口へ向かう。  お土産も数が多くなると選ぶのに時間がかかる。一時間以上の余裕がありながら、結局ぎりぎりになってしまった。でもまあ今回はミニ旅行だから、許して頂くことにしよう。  今回は予定通り無事に機上の人となった。  行きは各席に画面の付いている機だったが、帰りは違った。まあそんなに見たいものもなかったので、適当に音楽を聴きながら雑誌を見ていた。雨っぽい天気のせいか、体が少し冷える。JALのお姉ちゃんに頼んで毛布を貰い、コートの上からかけた。が。とても好みの色&肌触り。決めた。がめちゃお(笑) 機体が安定してからおにぎりとお茶を取り出して朝食。コンソメスープを貰い、人心地ついた。  出発は多分少し遅れたはず。でも五分遅れ程度で到着出来たので、まあまあかな。羽田から今日のパートナー二人に到着のメールを入れ、少しウィンドウショッピング。十一時半に有楽町で待ち合わせなので、それに合わせてモノレールに乗車。  上野のコインロッカーに荷物を預けるつもりでいたが、時間的に余裕がなくなるので、とりやめ。日比谷口で二人を待つことにした。携帯メールでやりとりして、無事に合流。最近は本当に便利ね。  日比谷近辺のビルで昼食。当初「胡蝶」というお店に入るつもりだったけど、移転したか閉店したかでなくなっていたので、「梅の花」に入ることにした。ちょっとした待ちスペースが非常に良い造りで優雅に待てそう。でも今日は時間が早かったので、待つまでもなく席に通された。  ランチメニューは¥1,500+サービス料10%+税だったかな? なかなかのお味。デザートが無かったのがちょっと残念☆  そして市村さんの待つ(←おい)日劇へ。  日劇に来るのは久しぶり。多分鹿賀丈史さんの「ジキルとハイド」以来だろう。ちょっと混んでいたが、フロントで大きい方の鞄を預け、席に着く。  最近お芝居ではあまり良い席に行かない。高いからである。  以前は見るからには、と高い席を取っていたのであまり回数を見ることが出来なかった。それは一つの考え方だけど、予算的には安い席の方が確かにありがたい。そして今回も天井が触れそうな程遠い席だった。  お芝居が始まって、音楽がどんどん大きくなった。  リチャード三世はイギリスの劇作家シェイクスピアの代表作の一つで、史実を元に構成されている。シェイクスピアは幾つか読んだが、お芝居で見るのは今回が初めて。音楽と共に期待も高まる。  リチャード三世を演じるのは稀代の舞台俳優、市村正親さん。かつて西村晃(二代目水戸黄門)の付き人をやっていた過去がある。四季時代は「オペラ座の怪人」「イエス・キリスト・スーパースター(現ジーザス・クライスト・スーパースター)」「ロミオとジュリエット」「エレファントマン」「エビータ」などを演じ、退団後も「スクルージ」「クリスマス・キャロル」「ミザリー」「海の上のピアニスト」「ミス・サイゴン」などあらゆる役をこなしてきた超大物舞台俳優である。  余談、終わり。  夏木マリさん演じる王妃エリザベスと市村正親さんの王弟リチャードは圧倒的な存在感。特に悪の権化でありながら、どこかユーモラスな空気を残しているリチャードは強くて残忍で醜悪な王なのに憎めない可愛らしさを兼ね備えている。市村さんならではのチャーミングなリチャードと言えるだろう。個人的に、オープニングとエンディングで登場する「馬」がお気に入りになった。結局馬を脱いで挨拶してくれることは無かったので、とても残念。轟音を上げて倒れるシーンが非常に素晴らしいので、是非演じた人を見てみたかった。  リチャード三世は二部構成で、間に二十分程の休憩を挟む。一部が一時間三十五分、二部が一時間五分なので終了するまでに最初から三時間かかる。お話はリチャードが謀略を以って王になるまでを一部とし、その後のお話を二部としている。  ストーリーは敢えて語る必要もないだろう。極悪人と言われるリチャード三世の生涯を描く物語である。跛を引きずりつつ、阿諛追従を並べ立てそしてそれに騙される善良な人々を裏で笑う作詞。サイドキャラには正直言ってもう少し鍛錬を積んだ方が良さそうな人がいたが(だって台詞間違えるんだよ。敵味方が逆になっちゃうとこだった)、子役を含めて全体的には良かったと思う。衣装もあまり変更しないようにしていたから遠くからでも人物の見分けが比較的楽だった。  圧巻は二部かな?  王妃エリザベス(夏木マリ)との掛け合いシーン。後で「この二人だったからまだ大丈夫だったんだよね。他の人だったら聴いてるのも辛かったね」と友人と話をしたが、非常に素晴らしいものだった。因みになんで「キツい」かというと、旅行の緊張から徐々に開放され、胃袋は満たされてヒュノプス(ギリシアの眠りの神)に魔法を掛けられているところだったからである。  今回はセットもなかなか面白かった。鏡と鉄格子を巧く組み合わせている。ロンドン塔も牢屋も玉座も戦場も全てそれらを工夫して使っているようだ。パンフレットが見たくなったが、購入するとまた荷物が増えるので諦める。  お芝居が恙無く終了すると、すぐにアンコール。  ロックのライブと違って、舞台のアンコールは何度も登場し、何度も去る。その度に拍手し続けねばならないので、手が痛くなる。でもそんなアンコールの最中でも市村さんはリチャードだ。跛を引きずったまま、何度も現れては去るのである。  幕が下りて劇場の外へ出るともう暗かった。マチネ(昼の部)だったが、冬になっては十六時を過ぎて明るい筈はない。クリスマスが近づいて、それらしい華やいだイルミネーションの街をCD屋に向かって少し歩いた。買物を終え、帰路につくと予定していた電車に丁度良い時間だた。今日は私が書道のお稽古なので、駅コンビニでパンを購入。友人二人は地元駅で、今回来られなかった友人Iと夕食を摂るのだという。同じ電車で行けることになったのは非常に嬉しい。二つ手前の駅で二人と別れ、師匠宅へ。簡単に二日間のことを報告して、お稽古。例の如く笑って頂いたが、疲れていたので早めに帰宅。自室で旅装を解くともうバッタン☆だった。  かなりの長文になってしまったが、今回の旅行行程は以上で全てである。という訳で。  読了おつかれさまでした。お茶でも飲んでお休み下さい(笑)